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壁と床だけで部屋はどこまで変わる?

リフォーム

橋本 侑弥

筆者 橋本 侑弥

不動産キャリア15年

不動産業界歴15年。賃貸仲介を中心に、市場データ分析と広告戦略を強みとしてきました。名古屋市内の複数エリアで現場経験があり、地域の生活情報にも精通。最新のマーケティング手法を活かした客付け・売却提案を得意とします。名古屋市東区出身、昭和区在住。

壁と床を変えると、
部屋はこう変わる

家具も間取りもそのまま。壁だけを変えた3例と、床だけを変えた2例で比べます。

この記事でわかること

壁と床を変えると、部屋の印象がどこまで変わるのか。カメラの位置・家具・建具・照明をすべて固定したまま、壁だけを3パターン(ベージュ/グレージュ/ブルーグレー)床だけを2パターン(濃い木目/石目調タイル)に変えた画像を並べて比較できます。色合わせの基本ルール、壁と床を同時に工事するメリット、費用の目安まで一通りわかります。

費用・工期の目安

費用

約9〜18万円/6畳

壁と床をまとめて。床は重ね張り

工期

1〜2

1部屋・家具の移動を除く

壁1面だけの張り替えなら約3.5〜5.5万円から。壁と床は、別々に工事するより同時に行うほうが総額を抑えやすくなります(第11章)。

「内装をおしゃれにしたい」と思ったとき、多くの方がまず家具を買い替えようとします。けれど実際には、家具を1つも買い替えなくても、部屋の印象は根本から変えられます

今回は、それを実際に見ていただく企画です。しかも壁と床をいっぺんに変えるのではなく、片方ずつ変えて、それぞれの効果を切り分けます

実験1|床はそのまま、壁だけを2パターン

戸建てのLDKで、床・家具・建具をすべて固定したまま、テレビ背面の壁1面だけをグレージュ/ブルーグレーに変えます。

実験2|壁はそのまま、床だけを2パターン

マンションのLDKで、壁・家具・建具を固定したまま、床だけを変えます。


▲ 上段は壁1面だけを変えた2枚、下段は床だけを変えた2枚。動かしたものは、何ひとつありません。

こうして分けて見ると、壁と床がそれぞれ何を担っているのかがはっきりします。まずは、そこから説明させてください。

目次

1. なぜ、壁と床だけで部屋の印象が変わるのか 2. 【実験1】床はそのまま、壁だけを変えてみる 3. 壁① ベージュ|やわらかくナチュラルに 4. 壁② グレージュ|上品で落ち着いた印象に 5. 壁③ ブルーグレー|濃色で空間を引き締める 6. 【実験2】壁はそのまま、床だけを変えてみる 7. 床① 濃い木目|重心を下げて、落ち着かせる 8. 床② 石目調タイル|生活感を抜く 9. 【一覧】5パターンを並べて比べる 10. 色合わせの、失敗しにくい3つの基本ルール 11. 壁と床は「同時に」やるべき|理由と費用の目安 12. 結局、どれを選ぶ?
1. なぜ、壁と床だけで部屋の印象が変わるのか

理由は単純で、視界に入る面積が、圧倒的に大きいからです。

部屋に入って目に映るものを面積順に並べると、上位はほぼ壁と床で占められます。ソファやテーブルは、実は見えている面積としてはかなり小さい。だから家具を1つ買い替えるより、壁と床を変えるほうが、印象の変化はずっと大きくなります

そして、壁と床では担っている役割が違います。

部屋の印象をつくる3つの要素

実験1で変える

明るさ・温かさ・空気感を決める。面積がいちばん大きく、光を反射して部屋全体の明度を左右します。

実験2で変える

重厚感・広さ・家具との相性を決める。部屋の「重心」をつくる面で、濃いほど落ち着き、明るいほど広く見えます。

今回は固定

建具・家具

ドア・枠・ソファ・テーブル・テレビ台。今回はすべて既存のまま、いっさい変更しません。

建具と家具を固定して、壁と床を片方ずつ動かすのが今回の企画です。だから「別の部屋を見せられている」のではなく、壁の効果と床の効果を、それぞれ切り分けて確かめられます。

現場から:「インテリアを変えたい」というご相談で、私たちが最初に確認するのは建具の色です。ドアと枠は工事の規模が大きく、簡単には替えられません。だから「変えられない建具を軸に、変えられる壁と床を合わせる」——この順番で考えると、選択肢が一気に絞り込めます。

2. 【実験1】床はそのまま、壁だけを変えてみる

※以下は、壁と床の色による見え方の違いを分かりやすくするためのイメージです。実際の仕上がりは、商品・照明・窓の向き・時間帯によって異なります。

最初の実験は、戸建てのLDKです。対面キッチンとダイニング、その奥にリビングという、いま最も多い間取りです。

床は明るいオークの木目で固定。ダイニングテーブル、チェア、ソファ、テレビ台、建具、カーテン、照明——すべてそのままです。変えるのは、テレビ背面の壁1面だけ

つまり3パターンとも、変えているのはテレビ背面の1面だけです。壁全体を張り替えるのではなく、いずれも広い意味では「アクセントクロス」にあたる工事。1面を変えるだけで印象がどこまで動くのか、という実験でもあります。

実験1|固定するもの/変えるもの

固定床(明るいオークの木目)・家具・建具・窓・カーテン・照明・カメラ位置
変更テレビ背面の壁クロスのみ

3. 壁① ベージュ|やわらかくナチュラルに

▲ テレビ背面は、織物調のあたたかいベージュ。床のオークと同じ暖色系でまとまり、部屋全体が柔らかい空気になる。

壁(変更)

ベージュ・織物調

床(固定)

明るいオークの木目

印象:明るい/柔らかい/万人受けする  向いている人:小さなお子様のいるご家庭、明るい部屋が好きな方、内装で失敗したくない方、売却前・賃貸募集前の方

いちばん失敗しにくい組み合わせです。壁も床も明るく、しかも同じ暖色系なので、部屋全体がひとつのトーンにまとまります。既存の木目建具ともなじみ、ダイニングチェアやテレビ台の木の色ともぶつかりません。

白いクロスとの違いは、「白すぎない」ことによる柔らかさです。純白の壁は明るい反面、少し硬く、素っ気なく見えることがあります。ベージュを一段入れるだけで、明るさを保ったまま空気がやわらぐ。今回の写真でも天井や左手の壁は白いままなので、その差を見比べていただけます。

そして最大の強みが、家具を選ばないことです。今後どんなソファを買っても、カーテンを何色にしても、まず破綻しません。売却前や賃貸募集前のリフォームで私たちが最初にご提案するのも、この組み合わせです。買主・入居者の好みが分からない以上、誰の好みも邪魔しない内装が最も強いからです。

弱点:個性は出ません。「無難で物足りない」と感じる方もいます。また、床と壁の色が近づきすぎると、のっぺりして見えることがあります。今回は壁を織物調にして質感で差をつけていますが、無地のベージュを選ぶ場合は、床より明確に明るいトーンを選んでください(第10章のルール①)。

4. 壁② グレージュ|上品で落ち着いた印象に

グレージュのクロス

▲ 同じ部屋、同じ床。壁のベージュから赤みを一段抜いただけで、空気が静かに引き締まる。

壁(変更)

グレージュ

床(固定)

明るいオークの木目

印象:上品/落ち着く/今っぽい  向いている人:流行りすぎず古びない内装にしたい方、家具の色がバラバラで悩んでいる方、写真映えを重視する方

グレージュは、いま取り入れやすい人気色です。前のベージュと見比べると変化は小さく見えますが、部屋にいるときの感じ方はかなり変わります。明るさはほとんど落とさず、色の主張だけを一段引いているためです。

実用面での強みは、家具の色を選ばないことです。グレージュは無彩色に近いため、木の家具にも、黒い家電にも、グリーンのソファにも当たりません。「家具の色がバラバラで統一感がない」という悩みは、壁をグレージュにするだけでかなりの部分が解決します。

今回の写真では、テレビの黒がベージュのときより落ち着いて見えるのが分かるはずです。壁の色みが減ったぶん、黒い機器が浮かなくなる。テレビ背面という場所とは、特に相性のいい色です。

ポイント:グレーではなく「グレージュ」を選ぶ

ここがこのパターン最大の分かれ道です。純粋なグレーを選ぶと、部屋が冷たくなります。特に北向きの部屋や、昼白色の照明の下では、青みが出て寒々しく見えることがあります。

純粋なグレー

青みを含む。シャープだが、冷たく・硬く見えやすい。

グレージュ(推奨)

グレーにベージュを含ませた色。落ち着きを保ちながら、温かさが残る。

見分け方は簡単で、サンプルを白い紙の上に置くこと。青っぽく見えればグレー、わずかに黄みを感じればグレージュです。

現場から:グレージュはメーカーや品番によって「グレー寄り」「ベージュ寄り」の幅がかなり広い色です。カタログの小さな見本では判別できません。必ず大きめのサンプルを、実際の部屋の光の下で確認してください。ここだけは省略しないほうがいい工程です。

5. 壁③ ブルーグレー|濃色で空間を引き締める

ブルーグレーのアクセントクロス

▲ テレビ背面の1面だけをブルーグレーに。左手の壁と天井はベージュのまま。奥に「壁がある」ことがはっきり分かり、空間に奥行きが出る。

壁(変更)

ブルーグレー

テレビ背面の1面のみ。ほかの壁はベージュのまま

床(固定)

明るいオークの木目

印象:奥行きが出る/引き締まる/ホテルライク  向いている人:費用を抑えて印象を変えたい方、テレビ背面をすっきり見せたい方、間接照明を使いたい方

前述のとおり、この3例はいずれもテレビ背面1面だけの変更です。ただし3例のなかでも、いわゆる「アクセントクロス」らしい変化がいちばん大きいのが、このブルーグレー。壁と床の色みをはっきり離した結果です。

工事の規模は、ほかの2つと変わりません。壁1面ぶんのクロスだけで、これだけ印象が動く——ここがこのパターンの価値です。

なぜここまで変わるのか。理由は奥行きにあります。壁がすべて同系色だと、部屋は「ひとつの明るい箱」に見えます。そこに濃い面を1つ置くと、その面までの距離が意識されるようになり、奥行きのある空間として見えはじめるのです。

アクセントクロスで押さえたい3点

① 貼るのは「1面だけ」。全面を濃くしない

4面すべてを濃色にすると、一般的には暗さや圧迫感が出やすくなります。ホテルの客室が広く感じるのは、濃い色を使っているのがベッドヘッド側の1面だけだから。目安は壁全体の20〜30%、4面のうち1面です。

② 濃くする面は「いちばん奥」を選ぶ

入ってすぐ手前の壁を濃くすると、壁が迫ってくるように感じられます。今回テレビ背面を選んでいるのは、入口から最も遠い面であり、かつソファに座っているあいだ最も長く視線が向かう面だからです。

③ 床・建具の色と、明確に離す

今回ブルーグレーを選んでいるのは、床のオークと建具の茶色から、色みがはっきり離れているからです。ここで中途半端に茶系の濃い色を選ぶと、床や建具と近づきすぎて「なんとなく濁った面」になります。アクセントは、外すならはっきり外すのが正解です。

費用の面でも、アクセントクロスは効率のいい選択肢です。壁1面ぶんの工事なので約3.5〜5.5万円——全面を張り替えるより安く、それでいて印象の変化はいちばん大きい。「予算は抑えたいが、部屋の雰囲気は変えたい」というご相談で、私たちが最初にご提案することの多い手法です。

色の選び方や貼る面の決め方は、アクセントクロスだけを詳しく解説した記事にまとめています。4色を並べて比較していますので、色で迷われている方はあわせてご覧ください。

照明とセットで考えてください:濃い面が「高級感」に見えるか「ただ暗い面」に見えるかは、照明で決まります。天井の照明1灯だけの部屋では、後者になりがちです。今回の写真でも、壁を上から照らすダウンライトと、テレビ台の上のテーブルランプが効いています。アクセントクロスを検討されるときは、照明の配置も同時にご相談ください。

6. 【実験2】壁はそのまま、床だけを変えてみる

ここからは場所を変えて、マンションのLDKです。今度は逆に、壁を固定して、床だけを変えます

壁は明るいベージュ系、建具は明るい木目のまま。ソファ、ローテーブル、テレビ台、ダイニングチェア、ラグ、カーテン、照明——すべて同じです。

実験2|固定するもの/変えるもの

固定壁(ベージュ系)・家具・建具・窓・カーテン・照明・カメラ位置
変更床材のみ

壁の実験では「空気感」が変わりました。床の実験で変わるのは、部屋の重心と、広さの感じ方です。同じ広さの部屋が、床の色ひとつで広くも狭くも見えます。

7. 床① 濃い木目|重心を下げて、落ち着かせる

濃い木目

▲ 濃いブラウンの木目。部屋の重心がぐっと下がり、落ち着いた空気になる。壁の明るさとの対比で、壁がより白く見える。

床(変更)

濃いブラウンの木目

壁(固定)

ベージュ系

印象:落ち着き/重厚/味がある  向いている人:書斎や趣味の部屋をつくりたい方、革やアイアンの家具が好きな方、明るすぎる部屋が落ち着かない方

床が濃くなると、部屋の重心が下がります。視線が自然に下に落ち着き、空間が「据わった」感じになる。革のソファ、アイアンの脚、真鍮の照明——そうした素材が最も映えるのがこの床です。

もうひとつ見ていただきたいのが、壁の見え方が変わっている点です。壁のクロスは変えていないのに、濃い床との対比で、壁がより白く・明るく見えます。床は、壁の見え方まで左右します。だから第10章で「床と壁は並べて確認する」とお伝えしているわけです。

注意:濃い床は、部屋が狭く見えやすい

落ち着きと引き換えに、広さの印象は損なわれやすくなります。特に6畳前後の部屋や、窓が1つしかない部屋では顕著です。今回のマンションLDKで成立しているのは、壁と天井を明るいまま残しているからにほかなりません。

濃い床を選ぶなら、壁は床より1〜2段明るく。これは第10章のルール②そのものです。

実用面では、ホコリと髪の毛が目立ちます。掃除の手間が増えるのは事実なので、そこは織り込んだうえでお選びください。

8. 床② 石目調タイル|生活感を抜く

タイル風の床

▲ 石目調の大判タイル。木目がなくなり、床面の情報量が一気に減る。同じ広さの部屋が、ひとまわり広く見える。

床(変更)

石目調の大判タイル

壁(固定)

ベージュ系

印象:無機質/シンプル/都会的/広く見える  向いている人:生活感を抑えたい方、在宅ワークのスペースを兼ねる方、家具や小物で個性を出したい方、部屋を広く見せたい方

同じ部屋、同じ壁、同じ家具です。それでも、濃い木目の写真と比べるとまったく別の部屋に見えます

効いているのは2つ。ひとつは明度で、床が明るくなったぶん部屋全体が明るく、広く見えます。もうひとつがです。木目という「方向のある柄」が消え、大判の石目に置き換わったことで、床面の情報量が一気に減りました。その結果、置いてあるものが引き立ちます。

在宅ワークのスペースを兼ねる部屋とも相性がいい。生活感が出にくく、オンライン会議の背景としても悪くありません。

落とし穴:無機質に振りすぎると、冷たくなる

床から木目と色みを抜いた部屋は、そのままでは「事務所」に近い印象になりかねません。どこかに温かいものを残すことが必要です。

木の家具を残す(今回はテレビ台・サイドテーブル・ダイニングチェアがその役目を担っています)
観葉植物を置く。無機質な部屋ほど、緑1つの効果が大きくなります
ベージュや生成りのファブリック(ラグ・クッション・カーテン)を入れる
・照明は電球色を選ぶ。昼白色にすると寒さが際立ちます

今回は家具を変えていないので、この効果がそのまま確認できます。木の家具とラグ、そして観葉植物があるおかげで、石目の床でも冷たくなりきっていない——逆にいえば、家具まで白と黒で揃えてしまうと、この部屋は一気に居心地を失います。

なお、石目調やモルタル調の床は、フロアタイルという塩ビ製の床材で施工するのが一般的です。既存のフローリングの上から重ね張りできるため、工期も費用も抑えられます。詳しくはフロアタイルとクッションフロアの違いを解説した記事をご覧ください。

9. 【一覧】5パターンを並べて比べる

1つずつ見てきたものを、最後にまとめて並べます。上段は壁だけを変えた3枚、下段は床だけを変えた2枚です。

<比較|5パターン一覧>

濃い木目石目調



▲ 上段:壁①ベージュ/壁②グレージュ/壁③ブルーグレー 下段:床①濃い木目/床②石目調タイル

パターン 変えた
ところ
明るさ 高級感 家具の
合わせやすさ
個性 こんな方に
壁① ベージュ 失敗したくない/売却前
壁② グレージュ ○〜◎ 今っぽく、長く使いたい
壁③ ブルーグレー 壁1面 低コストで印象を変えたい
床① 濃い木目 △〜○ 重厚感/書斎・趣味の部屋
床② 石目調 広く見せたい/在宅ワーク

※◎○△の評価は、弊社の仲介およびリフォーム現場での感覚に基づく目安です。実際の見え方は、部屋の広さ・窓の向き・照明・家具によって変わります。壁の3パターンと床の2パターンは、それぞれ別の部屋で比較しています。

表を並べると、はっきりした傾向が読み取れます。「明るさ・合わせやすさ」と「高級感・個性」は、おおむね逆に動くということです。

そしてもうひとつ。壁を変えると「空気感」が、床を変えると「重心と広さ」が動く——2つの実験を分けたことで、この違いがはっきりしました。雰囲気だけ変えたいなら壁、部屋の見え方そのものを変えたいなら床。ここが、予算配分を決めるときの判断軸になります。

現場から:こうして並べると、同じ部屋でも印象が大きく違って見えます。カタログの小さな色見本だけで決めるのが難しいのは、まさにこの「部屋全体でどう見えるか」が想像しづらいからです。ご相談の際は、こうした比較をご用意したうえでお話しします。

10. 色合わせの、失敗しにくい3つの基本ルール

方向性が決まっても、具体的な品番を選ぶ段階でつまずく方が多いので、押さえておきたい3つをお伝えします。

ルール① 床と建具を、完全に同じ色にしない

意外に思われますが、床の色を建具にぴったり合わせようとすると、たいてい失敗します

床材と建具はメーカーも素材も違うため、完全な一致はまず不可能です。近づけようとするほど、わずかな色差やツヤの違いが「合っていない」として目立ってしまいます。近似色ほど差が目に付く、という色の性質です。

避けたい:近づけすぎ

わずかな差が「間違い」に見える

おすすめ:はっきり離す

意図した対比として成立する

合わせるなら思い切り近く、外すならはっきり離す。中途半端がいちばん危ない、と覚えてください。第5章でアクセントクロスにブルーグレーを選んでいるのも、床と建具の茶系から明確に離すためです。

ルール② 床 → 壁 → 天井の順に、明るくする

迷ったときの基本形がこれです。下にいくほど濃く、上にいくほど明るく。自然界の見え方(地面は暗く、空は明るい)に近いため、無意識に安定して見えます。

天井 いちばん明るく。基本は白でOK

 中間。床より1〜2段明るく

 いちばん濃く。部屋の重心をつくる

逆にすると——つまり床より壁を暗くすると、天井が下がってきたように感じられ、圧迫感が出やすくなります。第7章の濃い木目の床で壁を明るいまま残しているのも、この順序を意識してのことです。

もちろん、これは絶対のルールではありません。壁1面だけを濃くするのは、まさに意図して崩す例ですし、広い部屋や大きな窓のある部屋、照明を計画できる場合は、崩しても成立します。迷っている段階では、この順序に従っておくと失敗しにくい——そのくらいの位置づけでお考えください。

ルール③ サンプルは必ず、床と壁を「並べて」確認する

これが最も見落とされがちで、最も効くルールです。単体で見て良かった色が、合わせると違って見えることは珍しくありません。

色は隣り合うものの影響を受けます。第7章で「床を濃くしたら壁がより白く見えた」のが、まさにこの現象です。壁のサンプル単体では上品なグレージュに見えても、暖色系の床の隣に置いた瞬間、青く沈んで見えることがある。逆もまた然りです。

確認するときは、この3つを守ってください。

① 床サンプルは床に置き、壁サンプルは壁に貼る
両方を机の上で見比べても意味がありません。光の当たり方が実際と違うためです。

② 昼と夜、両方で見る
電球色の照明の下では、多くの色が黄みを帯びます。グレーが黄土色っぽく見えることも珍しくありません。

③ できるだけ大きなサンプルで見る
面積が大きくなるほど、色は明るく・鮮やかに感じられます(面積効果)。カタログの小さな見本だけで決めると、施工後に「思ったより派手」となりがちです。

11. 壁と床は「同時に」やるべき|理由と費用の目安

「まず壁だけ、床は来年」とお考えの方も多いのですが、可能であれば同時に行うことを強くおすすめします。理由は5つあります。

① 部屋全体の色を、一度に設計できる

これが最大の理由です。壁を先に決めてしまうと、翌年の床選びは「その壁に合う床」から選ぶしかなくなります。第10章のルールを守ろうにも、片方が固定されていては選択肢が半減します。

② クロスと床の色合わせを、現場で確認できる

同時工事なら、実際の部屋にサンプルを並べて最終判断ができます。第10章のルール③を、いちばん確実な形で実行できるということです。

③ 巾木まで、まとめて新しくできる

見落とされがちですが、これが仕上がりを大きく左右します。詳しくは下の解説をご覧ください。

④ 家具の移動と養生が、1回で済む

壁工事でも床工事でも、家具はどかす必要があります。別々に頼めば、この手間も費用も2回分。暮らしへの負担という意味でも、まとめたほうが圧倒的に軽いです。

⑤ 工事日数と、職人の出張が1回にまとまる

出張費・養生費・最低施工料金は、1回の工事につき1回分です。別々に頼むと、そのたびに発生します。同時工事のほうが総額を抑えやすいのは、この構造によるものです。

見落とされがちな主役:巾木(はばき)

巾木とは、壁と床の境目に付いている細い部材のことです。壁と床の隙間を隠し、掃除機や家具の衝撃からクロスの下端を守る役割があります。

ここが問題になるのは、壁も床も新しくしたのに、巾木だけが古いまま残るケースです。巾木は部屋をぐるりと一周しているので、そこだけ色あせて傷んでいると、視界の下端でずっと古さを主張し続けます。新品の壁と床のあいだに、1本だけ古い線が走っているような状態です。

床を張り替える場合、巾木は交換または処理が必要になることがほとんどです。壁と床を同時に行うなら、この機会にまとめて新しくしてしまうのが、いちばん無駄がありません。費用も、単独で頼むより大きく抑えられます。

費用の目安です。6畳の洋室を想定し、工事の範囲を5パターンに分けて比べます。

工事の範囲 費用の目安 工期 内容
壁1面のみ(アクセントクロス)約3.5〜5.5万円半日〜1日第5章のパターン。いちばん手軽
壁紙のみ約4.5〜7万円1日壁+天井の張り替え
床のみ約4.5〜12万円半日〜1日重ね張り。クッションフロアなら安く、フロアタイルなら高く
壁+床約9〜18万円1〜2日部屋全体の色を設計できる
壁+床+巾木約10〜20万円1〜2日仕上がりを重視するならこちら

※6畳・重ね張りの場合の目安です。材料費・施工費のほか、養生・見切り材・諸経費を含みます。壁紙のグレード、床材の種類(クッションフロア/フロアタイル)、下地の状態によって変動します。既存床の撤去や下地補修が必要な場合、家具の移動をお任せいただく場合は別途です。

表の読み方:「壁のみ」+「床のみ」を別々に工事すると9〜19万円ですが、同時に行えば約9〜18万円。出張・養生・家具移動・最低施工料金が1回分で済むぶん、総額を抑えやすくなります。差が出やすいのは、グレードの高い材料を選んだときや、複数の部屋をまとめたときです。巾木まで交換する場合は、さらに1〜3万円程度を見込んでください。単独で巾木だけを頼むより割安になります。

床材の選び方によっても金額は変わります。同じ6畳でも、クッションフロアとフロアタイルでは費用が倍近く違うためです。それぞれの特性と使い分けは、フロアタイルとクッションフロアの違いを解説した記事にまとめています。

なお、複数の部屋をまとめて行うと、1部屋あたりの単価はさらに下がります。「リビングと寝室と廊下」のように範囲が広がるほど有利になりますので、住戸全体をお考えの場合は、ぜひ一度にご相談ください。

12. 結局、どれを選ぶ?

優先したいものから逆算すると、答えは早く出ます。

失敗しにくさ重視 → 壁① ベージュ 明るく、家具を選ばず、誰の好みも邪魔しません

今っぽさ → 壁② グレージュ 流行を押さえつつ、数年で古びない中間色です

費用対効果 → 壁③ ブルーグレー 工事は1面ぶん。変化の大きさは今回いちばんです

重厚感・落ち着き → 床① 濃い木目 書斎や趣味の部屋とも、特に相性のいい組み合わせです

広く見せたい・生活感を抜きたい → 床② 石目調 木の家具や植物を残せる方に向いています

ただし、ここまで書いておいて何ですが——この5つに「正解」はありません

同じグレージュでも、南向きの明るい部屋と北向きの部屋ではまったく違って見えます。既存の建具が濃い茶色なら、明るい床より濃い床のほうがまとまることもある。決め手になるのは、流行りでも人気ランキングでもなく、その部屋の建具・家具・採光との相性です。

今回の企画で家具と建具を固定し、壁と床を分けて実験したのは、まさにそのためでした。変えられないものを軸に、変えられる壁と床を合わせる。この順番で考えれば、選択肢は自然に絞り込まれていきます。

「うちの部屋なら、どれが合うだろう」と迷ったときは、ぜひ一度ご相談ください。建具の色、家具、窓の向きまで拝見したうえでご提案します。アクセントクロス1面だけの工事から、住戸全体のリフォーム・リノベーションまで承ります。

リフォーム・リノベーションについて、お気軽にご相談ください

壁紙と床の張り替えはもちろん、内装まわり全体のリフォーム・リノベーションを承ります。建具の色・家具・窓の向きを拝見したうえで、色合わせのご提案からお見積りまで一括で対応します。アクセントクロス1面だけの工事でも承ります。

※本記事の費用・工期は、弊社が取り扱った工事および一般的な相場をもとにした目安であり、部屋の形状・天井高・下地の状態・壁紙および床材のグレードにより変動します。◎○△の評価および色や質感の印象に関する記述は、弊社の仲介およびリフォーム現場での感覚に基づく目安です。掲載画像は、壁と床の色による見え方の違いを分かりやすくするためのイメージであり、実際の仕上がりは商品・照明・窓の向き・撮影条件により異なります。壁の3パターンと床の2パターンは、それぞれ別の部屋で比較しています。分譲マンションで工事を行う場合は、事前に管理規約および管理組合への届出の要否、床材については遮音等級の規定をご確認ください。賃貸住宅の場合は、賃貸借契約の内容をご確認のうえ、必要に応じて貸主・管理会社の承諾を得てください。

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